「不動産屋さんに払う仲介手数料って高すぎるんじゃないですか」
「なぜそんなに費用が掛かるんですか」
「物件の価格にかかわらず、することは同じじゃないですか?」
「なぜ物件の価格が高くなれば手数料も高くつくのですか?」
新人営業マンの鈴木が、自宅の売却依頼を受けた売主の奥さんから質問されたことがある。
鈴木はうまく答えられずに、しどろもどろに返事をして帰ってきたという。
「正直、ボクも不動産の手数料って高いというか、けっこう儲かるんだなという気がするんですけど」
と鈴木が言った。
先輩営業マンの北川が
「おまえ、自分が不動産屋のくせして、なに言ってるんだ」
と言った。
「仲介手数料の意味とか、媒介報酬額の計算の方法とかを客に説明できるんだろうな」
「知ってますよ。3%プラス6万円でしょ、それに消費税」
「知ってるだけじゃダメなんだよ。お客様に納得してもらえるように説明できないと」
「はい。わかりました先輩、教えてください」と鈴木が言った。
「バカ、おまえ宅建の勉強してるんだろうな」
「はい、今年も受けますよ」
「事務所の壁に『報酬額表』が貼ってあるだろう。あれは宅建業法で事務所のよく見えるところに貼っておくように義務付けられているんだ。一通り読んでおけよ」と北川が言った。
不動産業者に支払う手数料の額
報酬額表
正式には「宅地建物取引業者が宅地または建物の売買に関して受け取ることができる報酬の額」といい、昭和45年に定められた法律である。
この北川のいう「宅地建物取引業者が宅地または建物の売買に関して受け取ることができる報酬の額」略して報酬額表は不動産業者が宅建業の免許証とともに事務所に掲示するように義務付けられている。
不動産業者が売買の依頼者から受けとることのできる媒介報酬(手数料)の額は、上限が決められているのだ。
不動産業者が課税業者の場合はさらに消費税(10%)が加わる。
報酬額は消費税を含んだ総額で表示されるので、
売買代金が
200万円以下の部分は
媒介報酬額は5.5%以内
200万円を超え400万円以下は4.4%以内
400万円を超える部分は3.3%以内の額
と定められている。
簡易計算法
売買価格が400万円を超えるときは、簡易計算法があり、
消費税抜き売買代金×3.3%+66,000円となる。
この金額は上限であり、実際に支払う金額は話し合いで決めるものである。
手数料は成功報酬
不動産業者は努力して、売買などの契約を無事に成功させたときにはじめて手数料を請求することができる。
だいたい、契約時に半金、決済時に残りの半金を受け取るばあいが多い。
行政庁も不動産業者に対して、契約時半金、決済時半金を受け取るよう指導している。
そこで、仲介手数料の意味は、不動産業者が仲介をした場合は仲介手数料の有無、金額にかかわらず、取引の当事者に対して仲介責任を負わなければならないというところにある。
そのため不動産業者は宅建免許取得の際には法務局に一千万円の供託金が義務付けられている。
実際に、不動産業者が取引のミスをして、それこそ受け取った手数料以上の賠償額を請求された事例がいくらでもある。仲介業者の責任は重いのである。
ここで、冒頭の
「不動産屋さんに払う仲介手数料って高すぎるんじゃないですか。」
「なぜそんなに費用が掛かるんですか。」
「不動産の価格にかかわらず、することは同じじゃないですか?」
「なぜ物件の価格が高くなれば手数料も高くつくのですか?」
というお客様の質問に対して納得してもらえる答えが見いだせるのではないだろうか。
また、仲介手数料を値引きするなどという業者もいるが、単に媒介契約を締結したいために、手数料を値引きするという誘因行為は、宅建業法で消費者を保護する観点から禁止されている。
鈴木が「Aさんの奥さんは仲介手数料を値引きしてほしいというような言い方でしたよ」と言った。
「それで」と北川が言った。
鈴木が話を続けた
「それで言ってあげたんですよ。仲介手数料は3%プラス6万円と消費税と、法律で決まっているんですって」
「だから、報酬額表をよく読んどけって言っただろ」
「手数料は上限額が決まっているだけなんだ。国は最初から不動産業者を規制するつもりでこういう規定を設けているんだな」
「この金額以上は受け取っちゃだめだって」
「へぇ~そうなんですか」
「おまえ、わかってるのか」
「お客さんは、最初はおまえのことをプロだと思って対応してくるんだから、そういう質問に対して自信がなかったり、わからないときはわかりませんって正直に答えるんだな」
「すぐに本で調べたり、俺や先輩に聞いたりしてしっかり調べてから後でお客さんに報告すればいいんだ」
「すぐに答えられないことがあっても誠実な態度や行動を積み重ねていくことでお客さんの信頼をえることになるんだ」
「おまえ、いつもスマホをいじってるみたいだがゲームばっかしてるんじゃないだろうな」
「してませんって、仕事中は」
「仕事で使ってるんですよ。調べものをしたりとか」
「ならいいが」
「さっきの話しですが、信頼ですか」
「そうだ、まずはお客さんに好かれる営業マン、おまえの場合はこれはクリアしてるな、憎めんヤツだから、次にお客さんに信用される営業マン、信頼される営業マンになることだ。数字というか、売り上げはあとからついてくるもんだ」
「それと今年は『宅建』とれよ」
「はい、がんばります」
「今のおまえにはそれしかないな」
と北川が言った。
まとめ
仲介手数料は売買価格が400万円を超えるときは簡易計算法がある。
消費税抜き売買代金×3.3%+66,000円
が受け取ることのできる上限額である。
行政庁は契約時半金、決済時半金を受領するよう指導している。
不動産業者が仲介した場合は仲介手数料の有無にかかわらず責任を負わなければならない。
手数料の値引きは誘因行為にあたる場合がある。
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