古民家の空き家を仲介したときのことだ。
片田舎の古い農家で、昔は兼業で宿屋も営んでいたという。
200坪の敷地におそらく築100年近いと思われる木造の建物が建っている。
押し詰まってきた師走のことだったと思う、借主の意向での賃貸物件の契約をおこなった。
このあたりは過疎化が進み近隣の農家も空家が増えてきている。
最寄りの駅まで車で30分、近くのコンビニ、スーパー等も車で15分はかかる。
所有者は近くの町に出て居を構えている。
借主は他府県に住む20代の独身女性で、この田舎に一人で「移住」し、この古民家を改修して民宿を開業するとのことだ。
こちらが心配する事でないかもしれないが、
う~む、ここで本当に大丈夫なのか?
契約に先だってこの借主の保証人になるという人物と話しを進めていくうちに、そのからくりが見えて来た。
この保証人は、今はやりのベンチャー企業の社長だという。
そのからくりとはこうである。今、地方では高齢化、過疎化が進み、空家が増えている。
空家の所有者は固定資産税や維持管理が負担になってくる。
空き家の老朽化が進めば倒壊する危険もあり、庭木や雑草の繁茂、ごみの不法投棄など、様々な問題が実際に起こっており、自治体もその対策に乗り出した。
そこで、2015年に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され、各種の助成金などを交付する自治体もある。
いわゆる空き家バンクという制度である。
この物件も空き家バンクに登録されており、 個人が他府県から移住して、さらにいわゆる村おこしになりそうな事業を始めると市から助成金が出る。
その社長が言うには、過疎化対策、地域活性化のため市から様々な名目で、助成金が支給されるという。
要はこの助成金が目当てで、他府県に住む女性(どうも、助成金が支給された後で社員にするようである)が「移住」し事業を行うことにしたのではないか。
実際にはこのベンチャー企業が事業をおこなうようである。
保証人になる社長はこの地域の活性化に役立つ仕事をしたい等と知ったふうなことを言っていたが、本当にこのような事業をするのかどうか、採算が合うのかどうかも疑問だ。
けなげにも若い女性が一人で田舎に移り住み民宿を始めるという。
それには資金が必要だが、市はこの過疎地に移住し、村おこしに一役買ってくれるなら助成金を出しましょうというのである。
なおこの助成金には返済する必要がないものも含まれる。
この資金を受け取るのは、表向きはこの女性であるが、実際はこの企業や、社長個人が受け取るような印象を受けた。
もしそうなら、本来の助成金の主旨とは違う。
このような姑息な手段で得た資金で事業を始めようというのだろうか。
これでは、スタートの時点で先が見えている。
宅建業法に則り仲介したとはいえ、どうやら、この保証人の片棒を担ぐことになったようで、後味の悪い思いがしたものだ。
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